ハンガリーのピアノ教本④
ハンガリーで絶対的なピアノ教本といえば、バルトーク作曲の「ミクロコスモス」です。
156曲(全6巻)からなる素晴らしい作品集です。
「ミクロコスモス」は1926年から1939年にかけて、バルトーク自身の幼い息子ペーテルのピアノ練習のために書き下ろされたピアノ教本です。
バルトークという作曲家の名前はもちろん知っていましたが、実際にその作品を弾いたことはありませんでした。
ただどちらかというと、なんとなく難解な作風のイメージがありました。
カティ先生からレクチャーを受けるために、言われた通りに「ミクロコスモス第1巻」の楽譜を購入して、ご自宅に伺いました。
第一曲目、ペンタコードのユニゾン、二分音符と全音符だけの超シンプルな8小節の曲をカティ先生の前で弾きました。
♪ ドーレーミーーー ファーミーレー ミーファーソーファーミーレードーーーー
20秒あまりの簡単な旋律、あっという間に弾き終わってこの曲が何か?といった心境だったのを今でも覚えています。
カティ先生がこの曲について何をおっしゃるのだろうと思っていたら、
「ヨーコ、今、何を考えながらこの曲を弾きましたか?」
「えっ?」
・・・はっきり言って、何も考えずに弾いていました。
その後、たった8小節の曲の一音一音にカティ先生のダメ出しが出て、何度も弾き直しました。
楽譜に並んだ音符はただの記号ではなく、ひとつひとつの音、ひとつひとつの休符にまですべて意味を持たせて弾かなければならない・・・ということを恥ずかしながら、初めて実感出来たのがこの曲でした。
そうか、この単純な曲、いやたった一音すら意味を込めて美しく弾けないのなら、長大なベートーヴェンのソナタを弾けるわけがない・・・今までの自分のピアノがすべて無意味だと言われたような気がしてショックでした。
〜つづく〜
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