音楽の答えは全て「ミクロコスモス」の中に

「ミクロコスモス」は、ハンガリーの作曲家バルトークが6歳の息子ペーテルのために作った初心者のためのピアノ教本です。全6巻153曲からなる練習曲ですが、最初の1曲目はごくごくシンプルな8小節の曲です。リズムは2分音符と2分休符と全音符のみ。音域はドレミファソのたった5音です。

しかしこの短い曲の中に音楽に不可欠な必要要素が全て含まれていることに、改めて驚かされます。

最近のレッスンでは「拍を数える」練習を徹底しているのですが(これが最初から出来る生徒さんはなかなかいません)、この練習に「ミクロコスモス」は最適です。小さな生徒さんのために文字譜を作成してみました。最初は文字をひとつひとつ指で押さえながら、拍を数えます。

次に数えやすいように4拍毎に小節線を書き入れることに気付かせます。

次にドレミの音程をつけて歌ってみます。音が上昇するときは坂道を上っていくような感覚をイメージ、休符のところでは大きく息を吸って次の一歩を踏み出すイメージ、音程が下がるとともに気持ちを落ち着ちつかせるイメージ・・・メロディーは単調な一本調子ではなく緩急の波があるのですが、その波を自然に表現出来ている演奏がいわゆる「表現力豊かな演奏」となります(自由に表現出来るには技術も必要ですがそれはここでは置いておきます)。メロディーの波を感じながら(そして心の中では拍を保ちながら)自分の声でまず歌います。

流れるように自然に歌えるようになったら、文字譜を五線譜に書いてみてもとても勉強になります。

もちろんピアノでこれを弾く場合は、座る姿勢、腕の脱力、手首の柔軟性、呼吸・・・単に音を出す以外にもたくさんのことが要求されます。

ハンガリーでのレッスンで、私がこの「ミクロコスモス」を教わったときには、最初の一音を出す前から「はい、だめ」と先生にダメ出しされたのを思い出しました。理由は最初の音のイメージが私に出来ていなかったためでした。

「ミクロコスモス」の意味は「小さな宇宙」。バルトーク、奥深いです。