ハンガリーの民俗楽器ツィンバロン編③
〜前回からの続きです〜
ピアノのレッスンと見学、小学校のソルフェージュの授業見学に加えて、ツィンバロンも習い始めたことは前回書きました。
毎週土曜日の午後、マールタのお宅へトラムという路面電車に乗って通い、主にバッハのピアノ曲を二台のツィンバロンで演奏して過ごしました。
(ピアノの右手パートと左手パートを一人ずつ担当して合奏するのです)
ツィンバロンはピアノのご先祖さまにあたる楽器で、民俗楽器だけれどもバッハなどのピアノ作品の古典を演奏してもなかなか味わい深い演奏が出来るし、とても個性的な音色なのでハンガリーの現代作曲家がツィンバロンのために作品を書いたり、オーケストラの一員として扱ったり(それらの曲の世界初演はほとんどマールタが演奏し、中にはマールタのために書かれた作品もありました)、もちろんハンガリー民俗音楽の中でも特別な存在感があります。
さらにもうひとつツィンバロンには別の顔もあり、それはジプシー音楽に欠かせない楽器ということです(ジプシーという言葉は今では差別用語となっていますが、あえて使わせていただきます)。
ハンガリーの高級レストランや郊外にある観光客向けのレストランでは必ずといっていいほど、ジプシーバンドの生演奏があります。
主役はヴァイオリン、それにクラリネットとヴィオラにコントラバス、そしてツィンバロンが基本の編成です。
有名なブラームスのハンガリー舞曲第5番や、各国の観光客に合わせてそれぞれの国のおなじみの曲を哀愁たっぷりに、ときに目の覚めるような超絶技巧で賑やかに盛り上げてくれます。
ちなみに日本人観光客のためには「さくらさくら」や「荒城の月」をジプシーバージョンで華麗(?)に弾きまくってくれます。
世界で活躍するジプシーヴァイオリニスト、ロビー・ラカトシュ氏の「チャールダーシュ」
その演奏の自由奔放さと卓越したテクニックは、クラシック音楽を真面目に学んできた身としてはときに嫉妬すらしてしまいます。
というわけで、ハンガリーにおけるツィンバロンにはハンガリー民族の民俗楽器としての昔からある顔と、現代曲でも活躍する新しい斬新な顔(音楽学校にツィンバロン科がちゃんとあります)と、これまた伝統あるジプシー楽器としての顔があるというのが今回の話なのですが、そんな楽器を「日本人」の留学生がハンガリー人と一緒に「300年前のバッハ」が作曲したピアノ作品を演奏するという、よく考えると???な土曜日の午後なのでした。
〜まだ続きます〜
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