ハンガリーのピアノ発表会①
今回は久しぶりにハンガリーの思い出話です。
ハンガリーへ留学してまだ間もないころ、小学生の子どもたちによるピアノ発表会をカティ先生と聴きに行ったことがありました。
プログラムは、バッハやモーツァルトの小品やハンガリー人の作曲家による小品など、日本のピアノ発表会とはかなり選曲が違っていて新鮮でした。
プログラムが進むうちに、とても印象に残る曲がありました。
そのうちのひとつがバルトーク作曲「子供のために」より「Kana’sz ta’nc」です。
大平原のどこか遠くからたて笛の音が風に乗って聞こえてきたと思ったら、だんだん近づいてきて目の前を通り過ぎてまたどこか遠くへ去って行く(曲の最後には「pppp」の記号が・・!)・・・そんな情景が浮かんでくるような演奏でした。きっとバルトークも、民謡の採集をする旅の途中で同じような体験をしたのかもしれません。
こういう曲を発表会で演奏すると、スパイス的ないい存在感があるのですが「Kana’szta’nc」を日本語に直訳すると「豚飼いの踊り」。
う〜ん、とってもいい曲なのに、もし自分が子供だったら発表会の曲目にこのタイトルは微妙かもしれません(笑
ちなみにハンガリーには「羊飼い」「牛飼い」そして「豚飼い」、「ガチョウ飼い」もいるそうです(ハンガリーのフォアグラと羽布団は有名です)。
そういえば、どこまでも平らなハンガリー大平原を車で移動中、青い民俗衣装を着て颯爽と馬を駆る「牛飼い」さんに遭遇したことがありました。
車に同乗していたハンガリー人も「今みたいな本当の牛飼いに会うなんて珍しいよ!」と興奮していました。
「豚」と「牛」の違いはあれど、その時の風景をこの曲を弾くと今でも鮮明に思い出します。